賃貸オーナーが知っておくべき工作物責任と契約不適合責任について解説します

賃貸オーナーとして賃貸物件の運営を行っていく上では、さまざまな責任を負うことになります。
貸主(オーナー)は借主(入居者)に住居を貸すことになりますが、住居はその人の生活や人生に影響を与えるため、無責任に貸すことはできません。
賃貸オーナーに関連する責任としては、例えば「工作物責任」や「契約不適合責任」などが挙げられます。
今回は、それらの責任について、どのような内容なのかを解説します。

 

□賃貸オーナーの工作物責任とは?

 

 ▼工作物責任とは何か

賃貸オーナーに求められる「工作物責任」とは、工作物の設置に瑕疵(欠陥)があり、それによって他人に損害を与えてしまった場合に負う責任のことです。
民法717条で定められている責任で、以下のように説明されています。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」

ここで言う「工作物の設置」とは、賃貸物件であれば建物の建築行為のことで、「工作物の保存」は物件の維持管理のことを指します。
「工作物の占有者」とは、工作物(物件)を実際に自分の管理下に置いて使用している人のことで、賃貸アパートの場合、部屋を借りて実際にそこで生活している人や物件の管理を行う不動産会社を指します。
一方、「工作物の所有者」とは、物件を所有する権利(所有権)を持つ人のことで、賃貸オーナー(大家さん)を指します。

▼賃貸オーナーの責任

賃貸物件の場合、「一戸建てかアパートか」、「自主管理か管理委託か」などによって状況は異なりますが、例えば管理委託をしている賃貸アパートの場合、管理会社はオーナーからの委託を受けて建物の維持管理を担っている場合がほとんどであり、占有者とみなされる場合が多いです。
そのため、賃貸物件が原因で他人に損害を与えた場合、管理会社が十分な注意を払っていなかったことが分かれば、管理会社が賠償責任を負うことになります。

しかし、管理会社が十分な注意を払っていた場合、占有者である管理会社は免責され、所有者が責任を負うことになります。
すなわち、占有者と異なり、所有者は自らの無過失を立証したとしても免責されないのです。

以上のように、工作物責任においては建物所有者が負うリスクが大きいため、賃貸オーナーは、たとえ信頼できる管理会社に管理を任せていたとしても、日頃から建物の安全性に注意しておくことが大切です。

 

□賃貸オーナーの契約不適合責任とは?

 

▼契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、引き渡された目的物(賃貸物件)に契約内容等の不適合がある場合に、売主に問われる責任のことです。
かつての民法では瑕疵(かし)担保責任とされていましたが、2020年4月施行の改正後民法では契約不適合責任と定められ、債務不履行責任の1つとされています。

賃貸物件では、物件に何らかの不具合があった場合、借主が入居する前に不具合についてきちんと説明しておく必要がありますが、こうした説明が適切にされていなかった場合、入居後に借主から契約不適合責任を追及される可能性があります。
反対に、不具合について入居前にきちんと説明されており、その不具合を承知の上で入居していた場合は、契約不適合責任を追及されることはありません。
単に物件に不具合があれば契約不適合となるのではなく、事前の説明になかった不具合があるかどうかが判断のポイントとなるのです。

▼契約不適合責任を問われる例

契約不適合責任を問われる不具合の例としては、例えば以下が挙げられます。

・エアコンが正常に作動しない
・雨漏りがある
・蛇口から汚れた水が出る
・室内に想定以上の汚れがある

賃貸契約を結ぶ前に入居希望者は内覧を行いますが、内覧時には電気や水道が通っていないため、エアコンや蛇口に問題がないかどうかといった点は基本的に確認できません。
そのため、入居後に初めて不具合が明らかになり、契約不適合責任を追及されるケースがあります。

▼オーナーがするべき対策

1.事前の説明と契約書への明記を徹底する

たとえ不具合があったとしても、事前の説明がなされていれば契約不適合責任を問われることはなく、修繕義務を免れることができます。
ただし、口頭で説明しただけでは証拠が残らず、「言った・言わない」の言い争いになってしまう可能性もあるため、契約書に不具合の内容について明確に記しておく必要があります。

2.修繕義務に関する特約を定める

契約書に特約を定めておくことで、物件に不具合があったとしてもオーナーが修繕義務を負わないようにできます。
ただし、「どんな不具合であっても特約を定めさえすれば修繕義務を負わないことになる」というわけではありません。
例えば、すべての修繕を賃借人の負担とするといった特約を定めた場合は、過大な負担を課すものとして信義則や公序良俗違反を理由として無効と判断される可能性があります。
特約を定める場合は、その特約が無効にならないかどうかをチェックするためにも、事前に弁護士などに相談しておくと安心でしょう。

 

□まとめ

 

今回は、工作物責任と契約不適合責任について解説しました。
どちらも入居者の不利益を防ぐために重要な責任であり、入居者のためにはもちろん、オーナー自身のためにも必要なものです。
これらの責任に問われることがないよう、物件の状態はきちんと把握し、入居前の説明や契約書づくりは丁寧に行うことを心がけましょう。

※こちらは2023年8月31日時点での情報です。内容が変更になる可能性がございますのでご了承ください。

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